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帰国時に受け取れる「脱退一時金」のしくみと注意点

日本で働いて国民年金や厚生年金保険の保険料を納めた外国人の方が帰国するとき、納めた保険料の一部を「脱退一時金」として受け取れる制度があります。ただし、受け取ると日本での年金加入期間が消えるなど、知らずに請求すると後悔しかねない点もあります。日本年金機構の案内をもとに、制度の要点と注意点を整理しました。

誰が請求できるのか

日本年金機構の「脱退一時金の制度」では、国民年金の脱退一時金の支給要件として次の点を挙げています。

  • 日本国籍を有していないこと
  • 公的年金制度(厚生年金保険または国民年金)の被保険者でないこと
  • 保険料納付済期間等の月数の合計が6月以上あること(未納の期間は含まれません)
  • 老齢年金の受給資格期間(10年)を満たしていないこと
  • 障害基礎年金などを受ける権利を有したことがないこと
  • 日本国内に住所を有していないこと

厚生年金保険の脱退一時金も、加入期間が6月以上あることなど、ほぼ同じ要件です。請求は、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に行う必要があります。出国前に市区町村へ転出届を出し、出国後に請求書を日本年金機構へ郵送するのが基本の流れで、請求書は英語、中国語、ベトナム語など14の外国語に対応しています。

計算に使う月数は最大60月

支給額は加入していた月数に応じて決まりますが、計算に使う月数には上限があります。2021年(令和3年)4月以降に保険料を納めた期間がある方は60月(5年)が上限で、それ以前の期間しかない方は36月(3年)が上限です。

国民年金の場合、最後に保険料を納めた月が2026年4月から2027年3月の間であれば、支給額は次の表のとおりです。厚生年金保険の場合は、被保険者期間の平均標準報酬額に支給率を掛けて計算します。

加入期間国民年金の支給額(令和8年度)厚生年金保険の支給率
6月以上12月未満53,760円0.5
12月以上18月未満107,520円1.1
24月以上30月未満215,040円2.2
36月以上42月未満322,560円3.3
48月以上54月未満430,080円4.4
60月以上537,600円5.5

注意したいのは、61月以上加入していた方が請求しても支給は60月分が上限で、しかも請求前の加入期間はすべてなくなる点です。日本年金機構の請求書の注意事項には、90月分の加入期間がある方が請求すると60月分が支給され、90月分すべての期間がなくなる例が示されています。技能実習を終えて帰国し、その後に特定技能で再来日するなど複数回の在留が見込まれる方は、帰国の都度請求すれば、それぞれの期間に応じた支給を受けられる場合があるとされています。

厚生年金の脱退一時金には20.42%の所得税

同じ注意事項によると、非居住者が受け取る厚生年金保険の脱退一時金は、支給の際に20.42%の所得税が源泉徴収されます。国民年金の脱退一時金は源泉徴収されません。源泉徴収された税金は、「退職所得の選択課税による還付のための申告書」を税務署に提出することで還付を受けられる場合があります。

還付を受けるには、帰国前に、日本での最後の住所地を管轄する税務署へ「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出しておく必要があります。納税管理人になる資格は、日本に住所または居所があること以外に特にありません。脱退一時金の送金と同時に届く「脱退一時金支給決定通知書」の原本を納税管理人に送り、納税管理人が申告と還付金の受け取りを行う流れです。届出書を出さずに帰国した場合は、申告時に申告書と併せて提出します。

社会保障協定の国の出身者は特に慎重に

日本と年金加入期間の通算を定めた社会保障協定を結んでいる国の年金制度に加入していた期間がある方は、一定の要件のもと、日本と相手国の期間を通算して両国の年金を受け取れる場合があります。請求書の注意事項によると、2026年3月現在の相手国はドイツ、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルク、フィリピン、スロバキア、フィンランド、スウェーデン、オーストリアです。

通算した結果、受給資格期間が120月以上になる場合は脱退一時金を請求できません。120月未満なら請求できますが、受け取ると請求前の日本の加入期間がすべてなくなり、通算にも使えなくなります。日本年金機構のQ&Aも、将来日本の老齢年金を受け取る可能性を考えたうえで慎重に判断するよう呼びかけています。

請求前に確認したいこと

  • 日本の年金加入期間の合計と、将来また日本で働く予定があるか
  • 出身国が年金通算の協定国かどうか
  • 転出届を出したか。パスポートの写し、口座を確認できる書類、基礎年金番号がわかる書類がそろっているか
  • 厚生年金に加入していた方は、納税管理人の届出を帰国前に済ませたか

個別の計算や税金の手続きは、年金事務所、税務署、または専門家にご確認ください。在留資格や日本での暮らしに関する疑問には、株式会社スィンセーログローバルが複数の言語でお答えしています。お電話(090 7841 8887)、メール(info@sinceroglobal.jp)、LINEで承っています。