SINCERO GLOBAL

制度・法令

外国人労働者の労災保険:国籍を問わない補償と会社の義務

労災保険は、国籍を問わず、日本で労働者として働く外国人にも適用されます。就労できる在留資格を持つ人はもちろん、留学生がアルバイト中にけがをした場合も対象です。仕事や通勤が原因のけがや病気の治療は健康保険ではなく労災保険で受け、仕事を休んだ4日目からは、1日につき給付基礎日額の80%が支給されます。

誰が対象になるか

厚生労働省の「日本で働く外国人向け 労災保険請求のためのガイドブック」は、冒頭でこの点をはっきり書いています。外国人でも日本国内で働いている限り労災保険が適用され、留学中のアルバイトで事故にあった場合も含まれます。労災保険の保険料は全額を事業主が負担するため、働く人の給与から引かれることはありません。

同じガイドブックは、労働災害に健康保険は使えないことも示しています。仕事中や通勤中のけがで病院にかかるときは、労災であることを最初に伝えます。

受けられる主な給付

  • 治療:労災病院や労災保険指定医療機関では無料で治療を受けられます。やむを得ずそれ以外の病院にかかったときは、いったん自分で払い、後で請求すると全額が支給されます。通院の交通費も、原則として片道2キロ以上などの条件を満たせば支給されます。
  • 休業:休業4日目から、賃金を受けない日1日につき給付基礎日額の80%(保険給付60%と特別支給金20%)。給付基礎日額は、事故の直前3か月の賃金をその期間の暦日数で割った額です。
  • その他:障害が残ったときの給付、遺族への給付、葬祭料、介護の給付などがあります。

ガイドブックの計算例では、月給20万円で10月に事故があった場合、給付基礎日額は約6,522円で、休業1日あたり約5,217円が支給されます。休業の最初の3日間は労災保険からは支給されず、業務災害の場合は事業主が1日につき平均賃金の60%を休業補償として支払います。通勤災害の場合、この事業主の補償責任についての法令上の規定はありません。

請求には期限があります。自分で払った治療費や休業の給付は、支払った日や休んだ日ごとに請求権が生じ、その翌日から2年で時効になります。

本国に帰ったとき

帰国しても、すべての請求ができなくなるわけではありません。ガイドブックによると、日本以外から請求した場合、給付は支給決定日の為替レートで換算した円の額で支払われ、海外で受けた治療も内容が妥当と認められれば対象になります。一方で、アフターケアや義肢などの支給、労災就学等援護費など、日本国内に限られる支援もあります。帰国を予定している人は、出国前に労働基準監督署でどの給付が続くかを確認してください。

会社がしなければならないこと

労働災害で労働者が死亡したり休業したりしたときは、事業者は遅滞なく、労働者死傷病報告を労働基準監督署長に提出しなければなりません(労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第97条)。2025年1月1日からは報告事項が改正され、電子申請が義務化されました。報告を出さなかったり、虚偽の報告をしたりすると、いわゆる「労災かくし」として50万円以下の罰金に処されることがあります(福岡労働局の案内)。

労災の請求書には、事業主が事故の日時や状況などを証明する欄もあります。けがをした社員に労災を使わないよう求めたり、私生活でのけがとして扱うよう頼んだりすることは、本人に不利益を与えるうえ、会社にとっても大きなリスクになります。

派遣で働く人の場合

派遣労働者が労働災害にあった場合は、派遣元が加入する労災保険が適用されます。厚生労働省の派遣元・派遣先向けの資料によると、死傷病報告は派遣元と派遣先の双方がそれぞれ労働基準監督署に提出し、派遣先は提出した報告書の写しを派遣元に送らなければなりません。また、給付の請求では派遣元がけがをした日時や場所、状況を証明するため、派遣先から早めに事実を共有してもらうことが欠かせません。当社が派遣元となる場合、派遣元の手続は当社の義務です。労働者派遣のほかのルールは派遣の3年ルールの記事でも説明しています。

神奈川での相談先

神奈川労働局は、監督課の中に外国人労働者相談コーナーを置き、労働条件、労働災害、労災保険について相談を受けています。案内は英語、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語、タガログ語、中国語で用意されています。事故を防ぐには、母語で安全について学べることも大切です。厚生労働省の多言語の安全衛生教材はやさしい日本語の記事で紹介しています。